2011年7月4日月曜日

山路はや萩を咲かせてゐる

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―四方のたより― 再び、Kへ

今朝は4時に眼が覚めた。
久しぶりに4時半頃から散歩に出た。住吉公園を周回し大社の方へとお定まりのコース。
住吉大社の御田では、先月の御田植祭の折り設えられていた神楽舞台も橋懸りの渡り廊下も姿を消して、稲は水面から一尺ほどにも育って青一色。
石舞台の門前で一息入れて、こんどは住吉川の沿道コースへ。ここでも途中一息入れたが、帰着が6時10分頃の計1時間40分で9587歩。久しぶりなのに長丁場だったから少々へばり気味なのは無理もないか。

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Photo/今年の住吉大社御田植祭の一齣―’11.06.12

以下は前日のKからの便りへの返し。
お便り拝見―
神戸空襲の直撃だけでなく、あの太平洋戦争の所為で、貴方の家族や親族はずいぶん酷い目に遭っていたのですね。短い文の中に詰まった悲惨な出来事の数々に驚き入ってます。
私の家族も大阪空襲-私自身は生後8ヶ月-に遭っていますが、身内ではとくに犠牲者を出すこともなかったようで、昔語りに聞きかじって記憶していることは、日支事変の頃は徴兵でとられていた親父も、その頃は兵役も終え、鉄工所の経営に専念できていたのでしょう。空襲に備えて自宅兼鉄工所の地下にわざわざ自前の防空壕を造っていたといいます。すわ空襲という時、みなその防空壕に入って息をひそめたはいいが、なにしろ商売が商売、家には在庫の鉄材や座金などの製品がそれこそ山ほどあるのですから、爆撃が続くほどにそれらが焼けて焦熱地獄の直下の防空壕とあいなるわけです。こりゃいかんとみんな飛び出して、近くの防空壕に駆け込んだ、などと笑えぬオチがついた話を聞かされたことがあります。その焦熱と化した鉄の山は、一週間ほども燻りつづけていたっけ、という尾ひれまでついて‥。
さて、「弟の壁」問題ですが、不動産を担保に多額の借金をするというのは、私の知らなかった新事実―家屋が母親と彼-弟-の名義―を前にしては、到底彼の承諾を得られますまいから、諦める外ないと思います。ただ念のため、土地も建物も実際はどうなっているのか登記事項を確認するため、法務局の伊丹支局へ行ってみようとは思います。
そして彼女のこと―、この秋の来日は延ばして、貴方がこんどネパールへ行って、次に戻ってくる際に一緒に、というのは承知、それがよいのではと思います。
彼女や彼女の家族のために、なにがしかのものを遺してやりたい、という気持は分ります。そこでこれまでの生活パターンを変える工夫をしたほうがいいのではないかと提案したい。要するに、ポカラでの滞在を主体にし、日本で過ごす期間を必要最低限にするのです。
貴方の年金収入なら、そうすることで余計な支出を節約し、預貯金をぐんと増やすことが出来る筈です。これまではほぼ半々のポカラと宝塚の生活ですが、これを9:3あるいは10::2くらいにまですれば、かなりの余剰が出てくるのではないですか。100万貯めることも容易にできるでしょう。
仮にその方法を採るなら、二階の居候氏の問題も、そのまま最低家賃を貰って、留守番代わりに置いておく、というのが賢明な策となりましょう。もちろん、彼の同居人などはいっさい認めない、また家屋の改変はしてはならない、とか最低必要な約定を交わしてのことですが。
また、今度、そちらへ行った時に詳しく話をしましょう。 ―7月3日、返信

―山頭火の一句― 行乞記再び-昭和7年-176

7月4日、晴、一片の雲もない日本晴。
発熱、頭痛、加之歯痛、快々として楽しまず、といふのが午前中の私の気分だつた。
裏山から早咲の萩二枝を盗んで来て活ける、水揚げ法がうまくないので、しほれたのは惜しかつた。
萩は好きな花である、日本的だ、ひなびてゐてみやびやかである、さみしいけれどみすぼらしくはない、何となく惹きつける物を持つてゐる。
訪ねてゆくところもなく訪ねてくる人もない、山を家とし草を友とする外ない私の身の上だ。
身元保証-土地借入、草庵建立について-には悩まされた、独身の風来坊には誰もが警戒の眼を離さない、死病にかゝつた場合、死亡した後始末の事まで心配してくれるのだ!
当家の老主人がやってきて、ぼつりぼつり話しだした、やうやく私といふ人間が解つてきたので保証人にならう、土地借入、草庵建立、すべてを引受けて斡旋するといふのだ、晴、晴、晴れきつた。
豁然として天気玲瓏、―この語句が午後の私の気分をあらはしてゐる。
それにしても、私はこゝで改めて「彼」に感謝しないではゐられない、彼とは誰か、子であつて子でない彼、きつてもきれない血縁のつながりを持つ彼の事だ!
夜ふけて、知友へ、いよいよ造庵着手の手紙を何通も書き続けてゐるうちに、何となく涙ぐましくなつた、ちょうど先日、彼からの手紙を読んだ時のやうに、白髪のセンチメンタリストなどゝ冷笑したまふなよ。
とうとう今夜も徹夜してしまつた。

※表題句の外、2句を記す

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Photo/小郡、其中庵の前にて―’11.04.30


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