2011年8月24日水曜日

家をめぐる青田風よう出来てゐる

Dc09122692

―表象の森― <日暦詩句>-42

  「崖」  石垣りん

戦争の終り、
サイパン島の崖の上から
次々に身を投げた女たち。

美徳やら義理やら体裁やら
何やら。
火だの男だのに追いつめられて。

とばなければならないからとびこんだ。
ゆき場のないゆき場所。
(崖はいつも女をまっさかさまにする)

それがねえ
まだ一人も海にとどかないのだ。
十五年もたつというのに
どうしたんだろう。
あの、
女。

  -茨木のり子「言の葉Ⅱ」より-石垣りん詩集「表札など」-S43年刊-


―山頭火の一句― 行乞記再び-昭和7年-226
8月23日、何となく穏やかでない天候だつたが、それが此頃としては当然だが、私は落ちついて読書した。
旅がなつかしくもある、秋風が吹きはじめると、風狂の心、片雲の思が起つてくる、‥しかし、私は落ちついてゐる、もう落ちついてもよい年である。
此句は悪くないと思ふが、どうか知ら。

―山頭火の一句― 行乞記再び-昭和7年-227
8月24日、晴れてきた、うれしい電話がかかつてきた、-いよいよ敬坊が今日やつてくるといふのである、駅まで出迎に行く、一時間がとても長かつた、やあ、やあ、やあ、やあ、そして。――
友はなつかしい、旧友はとてもなつかしい、飲んだ、話した、酒もかういふ酒がほんとうにうまいのである。

※表題句のみ記す

08241
Photo/北の旅-2000㎞から―網走の監獄博物館-’11.07.28


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